私が簿記の勉強を始めるまで、減価償却という言葉はしってはいるものの意味を全く分かっていませんでした。
減価償却と聞くと何か専門的な難しい言葉と思う人も多いと思いますが、減価償却についてじっくり見ていきましょう。
減価償却とは
減価償却とは有形固定資産の価値を減らし、その減った分を費用へ振り替える事をいいます。
長期にわたって使用される有形固定資産の取得時の原価を、その資産が使用できる期間にわたって費用として配分していきます。
建物や車、備品などの固定資産を購入する場合には非常に高額なお金が必要になります。
こういう物は一会計期にしか使わないということはほとんどないですよね。
この金額を購入時に一括で費用にしてしまうのではなく、使用できる期間で割り返して毎年の費用としていくということです。
当期に使った分だけ(価値の減った分だけ)費用にしましょうという考え方ですね。
まずは減価償却をおこなう際に必ず確認する項目があります。
用語 | 内容 |
---|---|
取得原価 | 固定資産の取得時の価格 |
耐用年数 | 固定資産が使用可能な年数 |
残存価格 | 耐用年数経過後の固定資産の価格(帳簿価格) |
帳簿価格 | 帳簿上の価格。簿価 |
定額法 | 毎年一定の金額を減価償却する方法 |
減価償却累計額 | 減価償却した金額の累計 |
それでは減価償却の方法について見ていきましょう。
減価償却の方法
減価償却費と減価償却累計額
減価償却費(費用)とは減価償却をおこなって費用とした金額です。
期末時点でその固定資産の価値がどれだけ下がったのか?そしてその下がった分(使用した分)を資産から減価償却費(費用)にしていきましょうという処理ですね。
そして減価償却費を積み上げたものが『減価償却累計額』というマイナス資産の勘定です。
減価償却費=経過年数によって費用に計上していくと同時に資産の価値が下がっていきます。
資産の価値を下げるマイナス資産として減価償却累計額を使用していきます。
減価償却費の計算
まずはここに出てきている数字を整理していきましょう。
取得原価=備品の購入金額500,000円
耐用年数=備品の使用できる年数は5年
残存価格=購入金額の10%なので500,000×0.1=50,000円
用語 | 金額 |
---|---|
取得原価 | 500,000円 |
耐用年数 | 5年 |
残存価格 | 50,000円 |
この3つの数字を使って減価償却の仕訳をおこなっていきます。
一年間で費用にするべき金額『減価償却費』は
(『取得原価』-『残存価格』)÷『耐用年数』=『減価償却費』
この様に求めることができます。
先ほど出した数字を当てはめると
(500,000円 – 50,000円)÷5年=90,000円
つまりこの様に考える事ができます。
経過年数 | 取得原価 | 減価償却費 | 減価償却累計額 | 帳簿価格 |
---|---|---|---|---|
1年 | 500,000円 | 90,000円 | 90,000円 | 410,000円 |
2年 | 500,000円 | 90,000円 | 180,000円 | 320,000円 |
3年 | 500,000円 | 90,000円 | 270,000円 | 230,000円 |
4年 | 500,000円 | 90,000円 | 360,000円 | 140,000円 |
5年 | 500,000円 | 90,000円 | 450,000円 | 50,000円 |
ここで減価償却のポイントをまとめてみます!
- 取得原価は変動なし。
- 定額法(毎年同額を減価償却する方法)なので毎年の減価償却費は変動なし。
- 減価償却累計額は減価償却のたびに減価償却費を積み上げた金額。
- 帳簿価格は取得原価から減価償却累計額を差し引いた金額。
- 耐用年数経過後の帳簿価格=残存価格。
ここまでは非常に計算もしやすく分かりやすいと思います。
しかし、備品の購入は常に期首でのみ購入しているわけではありません。期中でも必要なタイミングで固定資産の購入は行われます。
その時はどの様に計算していくのでしょうか?
減価償却費の月割計算
期中のあらゆるタイミングで固定資産の取得をおこないますが、決算になれば必ず減価償却の処理をおこなわなければなりません。
しかし先ほどまではあくまで取得してから一年間の減価償却について見てきました。
今回は期の途中で取得した固定資産についての減価償却の処理について見ていきます。
減価償却の考え方は先ほどと同じです。もう一度見ておきましょう。
経過年数 | 取得原価 | 減価償却費 | 減価償却累計額 | 帳簿価格 |
---|---|---|---|---|
1年 | 500,000円 | 90,000円 | 90,000円 | 410,000円 |
2年 | 500,000円 | 90,000円 | 180,000円 | 320,000円 |
3年 | 500,000円 | 90,000円 | 270,000円 | 230,000円 |
4年 | 500,000円 | 90,000円 | 360,000円 | 140,000円 |
5年 | 500,000円 | 90,000円 | 450,000円 | 50,000円 |
こうですね。
しかしここで問題が発生します。
あくまでも1年経過事の減価償却費の算定であり10月に1日に取得した固定資産は決算時の3月31日にはまだ1年が経過していないのです。
減価償却はあくまでも使用年数に応じて資産の価値を下げて費用に振り替えなければなりません。
つまり当期の使用期間は10月1日〜3月31日までの期間のみでおこなわなければならないのです。
そこで登場するのが減価償却費の『月割計算』です。
1年間の減価償却費を使用した(期間)月で割る方法です。
1年間の減価償却費が90,000円、使用した期間が6ヶ月なので
月割計算は1年間の減価償却費 × 使用した期間 / 12ヶ月
この場合は
90,000円 × 6ヶ月 / 12ヶ月
90,000円 ÷ 1/2年 = 『45,000円』
10月1日取得分、固定資産の3月31日決算時点の減価償却費は45,000円と求められます。
- 期中で取得した有形固定資産は月割で減価償却をおこなう。
- 『1年間の減価償却費』 × 『使用した期間』 / 『12ヶ月』
減価償却の仕訳
減価償却費の算定方法はこれで分かりました。
しかし帳簿に記録する以上、決算時には仕訳が必要になります。
減価償却はいったいどのように仕訳するのか見ていきましょう。
先ほどの様にまずは減価償却費の計算をします。
(500,000円 – 50,000円)÷5年=90,000円
これで決算で減価償却をおこなう金額が分かりました。
では早速仕訳をしていきます。
日付 | 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
---|---|---|---|---|
3/31 | 減価償却費 | 90,000 | 減価償却累計額 | 90,000 |
これで減価償却は完了です。
減価償却費を費用として計上し、それに伴い資産のマイナス勘定である減価償却累計額相手勘定として仕訳をおこないます。
残高試算表に表すと下のようになりますね。
借方 | 勘定科目 | 貸方 |
---|---|---|
500,000 | 備品 | |
減価償却累計額 | 90,000 | |
90,000 | 減価償却費 |
減価償却累計額は資産のマイナス勘定なので貸方へ、減価償却費は費用なので借方へ記録していきます。
- 『減価償却費』の相手勘定は『減価償却累計額』である。
- 『減価償却費』は費用の勘定科目。
- 『減価償却累計額』は資産(マイナス)の勘定科目
まとめ
減価償却ときくと何か難しい言葉のように思いますが、一つ一つのポイントをおさえていけば決して難しいことはありません。
期中の仕訳と違い、決算整理では様々な特殊な仕訳が発生しますが、しっかりと理解を深めていくことが大切です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回のポイントをまとめたので参考にしてみてください。
『取得原価』=固定資産の取得時の価格
『耐用年数』=固定資産が使用可能な年数
『残存価格』=耐用年数経過後の固定資産の価格(帳簿価格)
『帳簿価格』=帳簿上の価格。簿価
『定額法』=毎年一定の金額を減価償却する方法
『減価償却累計額』=減価償却した金額の累計
- 取得原価は変動なし。
- 定額法(毎年同額を減価償却する方法)なので毎年の減価償却費は変動なし。
- 減価償却累計額は減価償却のたびに減価償却費を積み上げた金額。
- 帳簿価格は取得原価から減価償却累計額を差し引いた金額。
- 耐用年数経過後の帳簿価格=残存価格。
- 期中で取得した有形固定資産は月割で減価償却をおこなう。
- 『1年間の減価償却費』 × 『使用した期間』 / 『12ヶ月』
- 『減価償却費』の相手勘定は『減価償却累計額』である。
- 『減価償却費』は費用の勘定科目。
- 『減価償却累計額』は資産(マイナス)の勘定科目